子どもから高齢者まで、多くの人が使っている便利なスマホ。その便利さから、ついつい長時間にわたって使用してしまうこともありますよね。しかし、スマホを使いすぎると、脳がダメージを受けてしまいます。
この記事を要約すると・・・
スマホ脳疲労とは、スマホの使いすぎによって脳が休息を取れなくなり、疲労が蓄積した状態です。この状態が続くと集中力や感情の安定が失われ、睡眠障害や肩こりなどの身体的不調を招きます。適切な使用時間の設定やデジタルデトックスを実践することで、脳と身体を休めることが可能です。スマホと健全に付き合うために、ルール設定やアナログ活動を取り入れることが重要です。
スマホの使いすぎは、脳へ悪影響を与えます。多くの情報を得られるスマホは便利ですが、脳にとっては情報過多。適度に使用する分には問題ありませんが、使いすぎると脳がヘトヘトになってしまいます。
脳には、「浅く考える機能」「深く考える機能」「ぼんやりと考える機能」の3つの情報処理機能があるといわれています。人間の脳には「前頭前野」という部分があり、前頭前野が情報を処理しているのです。
スマホを使用しているときは、「浅く考える機能」が使われています。スマホから得られる文字や映像といった情報は膨大であり、脳は「浅く考える機能」を使って情報を処理しようとします。しかし、情報処理が追いつかなくなり、脳疲労が起こってしまうのです。
「浅く考える機能」が使われているときは、「深く考える機能」や「ぼんやりと考える機能」はフリーズしています。浅く考える機能ばかりを使い続けることで脳は疲労し、「もっとスマホを使いたい」という依存が発生します。スマホを使いすぎて脳が疲労しているのに、さらにスマホを使って疲労するという悪循環を起こしてしまうのです。
スマホ脳疲労とは、スマートフォンの過剰な使用によって脳が休息を取れなくなり、疲れが蓄積した状態を指します。この状態では、注意力や判断力の低下、感情の不安定さが顕著になります。特に情報の受け取りが常に行われる「スマホ社会」では、脳が過剰に働き続け、適切に休息を取るタイミングを失うことが問題です。
動画引用元:Youtube日テレNEWS 【注意】若い世代も“もの忘れ”に…使いすぎで「スマホ脳疲労」『every.特集』(2024年6月19日放送「news every.」より)
スマホ脳疲労は、疲れの蓄積が主なテーマです。一方で「スマホ脳」という言葉は、長期的なスマホ使用が脳の構造や働きに変化を及ぼす状態を指します。例えば、脳の報酬系が過剰に刺激されることや、前頭前野が萎縮する可能性があります。これにより、依存症に近い状態が発生することもありますが、スマホ脳疲労はより短期的な「疲労」の側面に焦点を当てています。
スマートフォンを頻繁に操作すると、脳が常に新しい情報に対応しようとします。その結果、重要な情報に集中する能力が低下し、記憶を効率的に保持することが難しくなります。特に、スマートフォンからの通知やアプリの切り替え操作が多い場合、タスクスイッチング(作業間の切り替え)が頻繁に発生し、脳が疲労する原因となります。
スマホ依存が高まると、ちょっとしたことで不安や怒りを感じやすくなります。これは、脳内のストレスホルモン「コルチゾール」が過剰に分泌されるためです。また、SNSでの比較意識やネガティブな情報の受け取りも、感情の不安定さを助長します。
ブルーライトがメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌を抑制するため、寝つきが悪くなるだけでなく、浅い睡眠が続くことがあります。また、長時間のスマホ使用により、姿勢が悪化し、肩こりや頭痛を引き起こすことも珍しくありません。
松﨑泰、川島隆太(2022年)の研究では、スマートフォンの長時間使用が脳の前頭前野にストレスを与え、認知機能を低下させることが明らかになっています。このような影響が蓄積されることで、スマホ脳疲労が進行する可能性があります。
参考文献:「スマートフォンの脳・学習への影響」松﨑泰、川島隆太(2022年)医学のあゆみ, 283(6), 659-662.
公益社団法人日本心理学会(2020年)のレポートでは、スマートフォン依存が報酬系の過剰活性化や前頭前野の機能低下を招き、集中力や感情のコントロール能力が低下することが示されています。ブルーライトや睡眠障害の要因も脳疲労に寄与します。
参考文献:「ネットとゲームへの依存が脳に及ぼす影響」公益社団法人日本心理学会(2020年)
山本晃輔(2019年)の研究は、スマートフォン依存の程度が高いほど、思考抑制能力が低下しやすいことを示しています。この結果、脳が効率的に情報を処理できなくなり、疲労やストレスが増加します。
参考文献:「スマートフォン依存傾向と思考抑制の関係」山本晃輔(2019年)日本教育心理学会総会発表論文集, 61, 426.
1日のうち多くの時間をスマホに費やすと、脳が一時的に休む機会を失います。例えば、通勤中や食事中、就寝前など、リラックスが必要な場面でさえスマホを使うことが習慣化している人も少なくありません。このような生活スタイルが脳の疲労を加速させます。
現代は、SNSやニュースサイトを通じて情報が次々と流れてくる「情報過多」の時代です。これにより、脳が処理すべき情報量が増え、過負荷状態になります。特にSNSでは「常に最新情報を確認しなければならない」というプレッシャーがかかり、ストレスの一因にもなっています。
スマホ画面から放出されるブルーライトは、目に入る光の中でも特にエネルギーが高く、体内時計を乱すことで知られています。この影響で脳が夜間でも覚醒状態を維持しやすくなり、疲労が回復しにくくなるのです。
仕事や学業において、集中力や判断力が求められる場面でパフォーマンスが低下する可能性があります。例えば、会議中に注意が散漫になったり、複雑な問題を解決する能力が低下したりするケースが多く報告されています。
長期間にわたるスマホ脳疲労は、感情のコントロールが難しくなるだけでなく、不安障害やうつ病のリスクを高める要因になるとされています。また、SNSでの他者比較がストレスの増加に繋がり、自尊心が低下することもあります。
スマホ操作時の猫背姿勢が肩や首への負担を増大させ、慢性的な痛みを引き起こすことがあります。また、睡眠不足が続くと免疫機能が低下し、風邪や感染症にかかりやすくなる可能性もあります。
日常的にスマホの使用時間を制限するために、使用時間を可視化するアプリを活用しましょう。また、「1時間ごとに10分の休憩を取る」「就寝30分前はスマホを見ない」といったルールを作ることが効果的です。
週末や休日にスマホを意識的に手放し、自然の中で過ごす時間を持つことが推奨されます。これにより、脳がリフレッシュし、ストレスが軽減される効果があります。
適切な睡眠を確保するだけでなく、ウォーキングや軽い運動を取り入れることで、脳の血流を促進し、疲労回復を助けます。また、オメガ3脂肪酸を含む魚やナッツを摂取することで、脳機能をサポートできます。
スマホ依存度を測るためのテストを受けて、自分の使用パターンを把握しましょう。特に、朝起きた瞬間にスマホを確認したり、何時間も無意識にスクロールしている場合は要注意です。
家庭内で「食事中はスマホを持ち込まない」「家族の前ではスクリーンをオフにする」などのルールを決めることで、家族とのつながりが強化されます。また、通知音をオフにすることで、スマホの誘惑を減らすことも可能です。
読書や楽器演奏、手芸などのアナログな趣味を持つことで、脳の新しい領域を活性化させることができます。さらに、自然の中での散歩やスポーツなど、デジタル機器に触れない時間を意識的に作ることが重要です。
スマホ脳疲労を予防するために、以下の習慣を身につけましょう。
脳の「ぼんやりと考える機能」は、重要な役割をもっています。人間の本質にかかわる思考を培うことができるため、ボーっとする時間をもつことが大切。1日5分でもかまいません。ぶらぶら散歩をしてみるのもおすすめです。
スマホを使用する際、「何々について調べる」といった目的をもつことが大切です。ただスマホの画面を眺めるのではなく、得た情報を自分の中で整理する癖をつけましょう。
あえてスマホを使わない、というのもおすすめの習慣です。たとえば、スマホを使ってメールを送っていたところを、手紙にして手書きしてみてはいかがでしょうか。
健康的な脳でいるためには、睡眠が大切。睡眠中には、疲労物質の代謝や脳細胞の修復が行われています。しっかりと睡眠をとり、脳疲労を予防しましょう。
脳には、タンパク質やビタミンB群、鉄、オメガ3系脂肪酸(DHAやEPA)などが良いといわれています。サプリメントやドリンクなどを活用し、無理なく栄養を摂取しましょう。